シリーズ ”アメフット工学”
Y = a X (序)
上の公式は、
フットボールチームの競争力(Y)は、チームの保有する戦力(X 、デプスの質と量)と戦力の運用能力を係数化したもの(a)の乗数で表せる
ことを示しています。
(a) の大きさを競う競技
NFL とメジャーリーグや欧州サッカーリーグとの一番の違いは「リーグ加盟チーム間で、保有する戦力に差がつくことを許容するかしないか」に表れています。NFL は「ドラフトによる指名制度」「フリーエージェント制度」「リーグ収益の均等配分」「サラリーキャップ制度」などによりチーム間の保有戦力に差がつきにくいように気を配っています。上の公式でいう(x) に値で差がつきにくい構造です。全チームはだから、チームの競争力(Y) の値を大きくするために、戦力の運用能力(a) の大きさを競うようになります。
実際に計算してみよう!その1:Cleveland Browns
Cleveland Browns はここ数年間、ドラフト指名権(しかも上位の)を多数次シーズンに持ち越すという、常識ではちょっと考えにくい行動をとっています。ドラフト指名権はいうなれば戦力と交換する「クーポン券」のようなものと考えられるので、そのクーポンを戦力に「換金しない」ということはデプスの質と量を充足できないということを意味します。また選手に支払うサラリーも、リーグによって定めれる上限を大幅に余らせてきました。以上のことから、Browns の保有する戦力(X )の値はリーグの最低水準にあると考えられます。
また、試合を見る限り「適切なスカウティングに基づいて準備されたゲームプランを適切に遂行しているか?」という点にも疑問符がつきます。以上のことから、Browns の戦力の運用能力の係数(a)はリーグの最低水準にあると考えられます。
リーグ最低水準の戦力(x)にリーグ最低水準の戦力の運用係数(a)を掛け合わせることで求められるBrowns の競争力(Y)はリーグ最低水準の値になると考えられます。
ここ数年のBrowns がなぜ勝てないのかはこれで説明がつきます(だいたいあってると思います)。
実際に計算してみよう!その2:Oakland Raiders
Raiders は2016年のオフェンスの大躍進を受けてさらなる飛躍を目指し RB, TE といったポジションを補強しました((X) の値を大きくした)。
一方でオフェンスの責任者の交代を受けてランオフェンスとパスオフェンスのスキームを大幅に変更しました((a)に昨シーズンと異なる値を代入した)。
その結果、オフェンスの競争力(Y)は大幅に低下しました。
昨シーズンのRaiders の失速は(a)に代入した値が不適切だった。つまり保有戦力の運用方法が間違っていた、ということで説明が可能です。
私はこれまでのNFL の観戦歴から、現代の「モダーンフットボール」を勝ち抜くには
- 攻守のパズルの組み立ての徹底(チーム作りレベル)
- ゲームプランの作成と実行の徹底(試合前の準備と試合中の取り組みのレベル)
- アライメント/アサイメントの実行の徹底(プレイにおける選手のレベル)
の「三つの徹底」が必要なのでは?と考えるに至りました。NFL で「王朝」と称せられるほどの成功を収めたチームは必ず
- チームの目標が明確(具体的)である。
- 目標を果たすのに最適な選手が揃っている
- ゲームの各局面において最適と考えられる手札を切っている
- 11人の選手がそれぞれの役割を精密に果たす。
といった共通の特徴がみられます(これらのチームは「チームの目標とするところ」を高い水準で実現するのでその「意図するところ」が見た目に分かりやすいという特徴があります)。この「自分たちに都合のいいストーリー(ゲーム展開)を相手に強制する、その強制力の強さ」の源を上の「三つの徹底」の徹底度合いに求められるのではないでしょうか?
以下の連載では、この「三つ」の相のそれぞれでどんな事柄が重要なのか、を自分の考えをまとめる意味でも書き留めておこうと思います。読んでくださる方にも何かしらに気づきになり、これからのフットボール観戦をより楽しめる一助になればと期待します。長くなると思いますが最後までお付き合いください。
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