新シーズンのRaiders の展望
オフェンス編
私はこの開幕直前の時期まで、Raiders のオフェンスはPatriots 型の
- パワーI フォーメーション(WR:2)
- スプレッドフォーメーション(WR:3)
を併用するオフェンスを志向するものと思っていましたが、実際にはI フォーメーション偏重のかなりランヘビーなオフェンスを展開するのかな、と思うようになりました。
Raider’s I Formation
2017シーズン、チームはM.Lynch の獲得を受けてラッシングのスタイルを2016シーズンの「スプレッド体型からの速いラン」から「I フォーメーションからの遅いラン」に切り替えましたが、ランオフェンスの生産性(他チームに対する競争力)はむしろ2016シーズンより低下してしまいました。そうなってしまった原因としては
- Offensive Line がゾーンブロック主体のスラントオフタックルに上手く適応できなかった
- ランブロックを得意とするFB がいなかった
- TB の位置からのパワーランの担い手としてM.Lynch の2番手が務まる選手がいなかった
などが考えられます。この結果を受けて新政権は
- の原因に対してはSeahawks でパワーランの構築を主導したTom Cable をOL コーチとして招聘した
- の原因に対してはランブロックを専業とするFB を獲得した
- の原因に対してはBuccs よりDoug Martin を獲得した
などの手を打ちました。とても理にかなった動きだと思います。これから新シーズンを迎えるにあたっての懸念材料としては
- 左右Tは機能するのか
- M.Lynch とD.Martin の二人で何回ボールを運べるか
あたりではないかと思います。
左右Tは機能するのか
右Tに入るD.Penn は「ヘルシーであれば」ソリッドなパフォーマンスを披露するものと思われます。
ルーキーのKolton Miller はいきなりLTを任されることになります。彼は
- Chargers のJoey Bosa,Melvin Ingram III
- Chiefs のJustin Houston,Dee Ford,Tanoh Kpassagnon
- Broncos のVon Miller,Shane Ray,Shaquil Barrett,Bradley Chubb
たちと2試合ずつ相まみえることになります…
Raiders としては彼がGruden 政権における正LTを任せられる器だとすると将来的なチームデプスの構築が格段にし易くなります。一方で彼が「ハズレ」の烙印を押された場合、将来的なチーム作りに重大な支障が生じるうえにD.Penn の健康問題も相まってせっかくの両G間への投資もスポイルされかねない深刻な事態になります。
M.Lynch とD.Martin の二人で何回ボールを運べるか
RBユニットのボールキャリー数は過去の実績を目安として
Marshawn Lynch :200
Doug Martin :140
others :100~160
くらいになるものと思われます。懸案となるのは、TBの素養があるのがLynch とMartin の2人だけであることで、この2人で上述の340回のラッシングを満たせなかった場合、つまり2人の代役としてRichard とWashington の2人を立てないといけなくなった時にはパワーランの競争力の低下が予想されることです。
推測ですが、首脳陣としてはTBの3番手としてChris Warren III を検討していたけど、彼がIR入りしてしまったためにD.Washington を残すことにしたのではないでしょうか。
I フォーメーションからのパスアタック
かなり期待が持てます。このフォーメーション(パーソネル)でのレシーバー陣は
- WR1:Amari Cooper
- WR:2Jordy Nelson
- TE:Jared Cook
という面子になりますが、この陣容にDB3+S1(冗長性:1) のパーソネル(人員配置)で対抗できるチームはNFLにほとんどないでしょう。Raiders としては
- DB3+S1(冗長性:1)で対抗してくるディフェンスに対してはこの3人で勝負する
- DB3+S2(冗長性:2)で対抗してくるディフェンスに対してはこの3人以外で勝負する(つまりパワーランをコールする)
という戦術上の優位を持つことができます。
Raider’s Spread Formation
FBの代りにWRを入れたフォーメーションです。RBには(おそらく)J.Richard が入ります。
Raiders が保有するレシーバーのうち戦力として計算できそうなのはCooper とNelson の2人だけで残りは「ふたを開けてみないと分からない」状況です。私が個人的に注目しているのは
の2人で、この両人のうちどちらかでもJ.Nelson の対側で相手CBを引き付ける役割を果たしてくれればA.Cooper の使い勝手が格段に良くなると思います。
Raiders オフェンスはどれくらい良さそうか
上はRaiders オフェンスの過去9シーズンのオフェンスレーティングです。新シーズンのとりあえずの目標となるのは2016シーズンに記録した100(偏差値60)です。2016シーズンの競争力の源泉となったのは
- Richard とWashington による速いラン
- Cooper とM.Crabtree への速い(投げ切り型の)パス
でした。
- 新たに構築しなおしたパワーランが競争力を持てば
- 2本から3本へ増えたパスオフェンスの柱が機能すれば
2016シーズンの実績を超えてくることもあながち夢ではないと思います。
ディフェンス編
新DCの元で、K.Mack なしで再スタートを切ります。
Defensive Front
J.Gruden 新政権の目玉、というか彼らがてこ入れに最も注力したのがこのユニットです。注目点は
- 4つのポジションのうちファーストチームの3人がルーキーでしかも3人ともが期待の持てる面子
- DTユニットのうち昨シーズンから在籍しているのがJ.Ellis とE.Vanderdoes (PUPリスト入り)の2人だけ
であることです。
この4人のファーストチームについてはかなり期待が持てます。この4人はそれぞれがブロッカーを1対1で打ち負かす競争力を持つ(と考えられる)ので、各スナップ毎に1対1のマッチアップとなる4人のうちの3人の誰か(あるいは何人か)が常に相手ブロックを打ち破りボールキャリアー(またはQB)に肉薄する期待が持てます。相手オフェンスがそのために有資格レシーバーの1人か2人をブロッカーに割けば、その分セカンダリーは4人(あるいは3人)に減った有資格レシーバーを7人がかりでカバーする余裕が持てます。
課題があるとすればユニット内でのローテーションの際にこの競争力を極力落とさないようにすることでしょうか。
ラインバッカーユニット
- WILLはかなり強力
- MIKEは「ソリッド」
と評価しています。新スキームにおけるSAMにはエッジと組んでRBのサイドラインへの流出を食い止める(ボックスエリアに閉じ込める)役割と特にTEをカバーする両方の役割が求められます。Raiders においてこのポジションにつく選手が果たしてこの役割を果たせるのか…ちょっと疑問に思います。
ディフェンシブバック
ディフェンスから見て右サイドは「G.Conley がフレッシュでありさえすれば」ディープゾーンまでふくめてかなり安定したパフォーマンスが期待できると思います。
左サイドのR.Melvin は「ソリッド」な活躍は期待して良いと思います。ただし
- 右サイド(オフェンスから見て左)が攻めづらい分彼のサイドへの攻撃が増えると見込まれること
- 彼の後ろを守るK.Joseph のカバー能力に不安があること
などの不安材料があります。他にも
- スロットコーナーの競争力
- そもそもConley は1シーズンを通じてフレッシュでいられるのか
など色々不安な点があります。
Raiders ディフェンスはどれくらい良さそうか
Raiders ディフェンスの過去9シーズンのディフェンスレーティングです。新シーズンのとりあえずの目標となるのは84(偏差値50)のあたりだと思います。
- ディフェンシブフロントが相手オフェンシブラインを終始圧倒すれば
- G.Conley が1シーズンを通じてフレッシュでありさえすれば
- R.Melvin はじめDB陣が「ソリッド」なパフォーマンスを維持すれば
…不可能な目標ではない、、と、、、(思います。)
Raiders はどれくらい良さそうか(終わりに)
Raiders の過去9シーズンの
- オフェンスのレーティング
- ディフェンスのレーティング
- オフェンスとディフェンスのレーティングの差
です。酷い成績です。
私が今季の目標に掲げたレーティングは
オフェンスが100(偏差値60)
ディフェンスが84(偏差値50)
でここから求められる差(ディファレンシャル)は16で、この差の偏差値は直近のチームに当てはめると
- 2015シーズンのSteelers 10勝6敗(地区2位)(差14.7,偏差値57.8)
- 2017シーズンのRams 11勝5敗(地区1位)(差16.3,偏差値58.6)
- 2017シーズンのSteelers 13勝3敗(地区1位)(差16.8,偏差値58.9)
あたりの成績に相当します。これを参考にするとプレイオフの出場とディビジョナルラウンドへの進出くらいを今シーズンのゴールとして良いのかな、と思います。
Principle を得たチーム
J.Gruden 政権の成立前と後とではっきりと変わったことは
「うちはこういうオフェンスでボールを進める」
「うちはこういうディフェンスで相手の意図をスポイルする」
という攻守の方針が明確になり、その方針における選手の補強の仕方にも一貫性があることです。今シーズンはこの方針に沿っててこ入れを進めたディフェンシブフロントの競争力の高さを査定することが一番の目的となるはずで、今シーズン終了後にこの目的がある程度果たされたとの評価が得られれば、次は(K.Mack のトレードで得られたドラフト指名権とサラリーキャップの空きを使って)今シーズン補強しきれなかった部分の増強に重点的にとりかかることになるでしょう。この取り組みを継続してパズルを組み立てていけば、その先により隙のないチームが出来上がるはずです。
これはチームにとって間違いなく良いことで、私が現時点でGruden を強力に支持する一番の理由です。
最近のコメント