2018シーズン ロースター決定
いきなりクライマックス
Raiders の2018シーズンのロースター53人が発表されました。
- デプスチャートの確認
- K.Mack のトレードとその影響(終わりに)
1.デプスチャートの確認
QB
昨季まで在籍のE.J.マニュエルとC.Cook が二人ともカットというのは意外でした。E.J.の方はプレシーズンでのパフォーマンスが低調なこともあり「まぁありえなくはないかな」と思わないではないのですが、、C.Cook はオフシーズンキャンプからずっと苦戦が続いてるとの報道がありました。プレシーズンでのパフォーマンスは首脳陣が抱いていたその「苦戦」の印象を覆すに至らなかったのでしょうか。それにしてもじゃぁCook よりMcCarron を高く買ったその根拠は何なの??という気はします。
エースのCarr は過去2季連続で欠場しているのでMcCarron に代打の機会が回ってくる可能性はかなり高いと予想します。
RB
Keith Smith (FB)
FBを含めまさかの5人登録となりました。M.Lynch とD.Martin は今季のオフェンスの主軸となるとみられるI フォーメーションでのTBポジションからのパワーランを担います。
ロースター発表までどちらかのカットは必至と思われていたJ.Richard とD.Washington は両名ともがロースターに残りました。J.Richard は恐らくパッシングダウンをふくむスプレッドフォーメーションでの役割を担うものと思われます。
プレシーズン(の、主に2ndチーム以降)に活躍をみせたChris Warren III はIR登録となりました。彼のラッシングの特徴はロスタックル、ノーゲインの発生頻度が低くボールをキャリーすると確実に3ヤード以上稼いでくれるところにありますが、それは
- 飛び込むべき穴の選択と飛び込むべきタイミングを間違えないセンスの良さ
- イニシャルタックルに負けない当たりへの強さ
といった素養に裏打ちされていると思われます。ボールセキュリティの意識も高くパスレシーブも上手い。M.Lynch の後継として将来のRaider オフェンスの主軸を担いうる選手だと思います。
WR
正直に言って、このユニットの面子がこうなるとは開幕前には予想できませんでした。
- オフシーズンにトレードで獲得していたR.Switzer をSteelers にトレード
- Steelers からトレードで獲得していたM.Bryant をカット
- 昨季度々見せたロングゲインで脚光を浴びたJ.Holton をカット
…ワーォ
M.Bryant とJ.Holton についてはパフォーマンスの安定性、つまり試合に出続けて、自分に投げられたボールをコンスタントに捕球し続けることができるか、という評価に及第点がつかなかったのだろうと思います。R.Switzer については、、良く分かりません(困惑)。オフシーズンからずっと”I love this guy” を連発していながらほとんど何の説明もなくトレードとは。
私のツイートやブログをフォローしてくれている人ならご存知でしょうが、私はS.Roberts を選手として評価していません。上述したように「試合に出続けて、自分に投げられたボールをコンスタントに捕球し続けること」をロースターに残すことの条件とするのなら何故彼を残したの?と思わざるを得ません。でも、、前政権の「遺産」をなんのためらいも見せず「整理」し続けるGruden が彼を残したことの意味はくみとってみようと思います。
この面子だとロングパスでディフェンスを奥にストレッチする役割を担えるのはCooper 1人に見えるんですけど、大丈夫なんですかね?
Offensive Line
Tackle
Center,Guard
Centerと左右Guard は控えの層までを含めてNFLで最も競争力の高い部分と思われます。チームにとっての懸念は左右のTackleです。
D.Penn は健康状態が良ければソリッドなパフォーマンスをみせるものと思われます。今ドラフト1位指名のK.Miller は将来的な伸び代はともかくとしてNFLデビューシーズンとなる今季に限っては苦戦するだろうと予想します。じゃぁ、D.Penn が健康問題で欠場したとしたら左右のTはどうなるでしょう?
今季ドラフト3位指名のB.Parker は、怪我で出遅れたこともあったのでしょうがプレシーズンでのパフォーマンスはこの先この業界で生きていくのが困難に思われるほど低調でした。
TE
レシービングTEのJ.Cook とブロック専業TEのL.Smith 、控えに実績のあるD.Carrier とバランスよくユニットをまとめることが出来ました。プレシーズンで活躍をみせたP.Butler はPS入りしました。
Defensive Front
Edge Rusher
Interior DL
K.Mack については後述します。
エッジのローテーションの主軸はB.Irvin とA.Key です。
B.Irvin はパスラッシュはそれなりにやるでしょうがランディフェンスでのコンテインはどれだけ上手くやれるでしょうか。彼のサイドで相手オフェンスがオープンにランを出され、そこからプレイアクションをからめて、、とやられるとディフェンスが相手オフェンスに対して後手に回ることになります。
A.Key はお披露目となったプレシーズン2戦目こそ奮いませんでしたが、その後の試合では将来性を感じさせるパフォーマンスを度々披露しました。彼にはどこかしらAldon Smith を彷彿とさせるところがあると思います。K.Mack が入るべきだったポジションを埋めるのが彼なので「彼がどこまでMack のパフォーマンスに近い働きができるか」がMack のトレードの成否を評価する際の直接的な要因になります。責任重大です。
S.Calhoun は2016ドラフトにおいて3位で指名された選手です。元々所謂「フリーク」としての評価で3位指名を勝ち取った選手ですが、プロ入り後のパフォーマンスは低調で2年目の2017季にはPS送りにされる屈辱も味わいました(余談ですがドラフト3位指名の選手が実質1年の稼働歴で評価されてPSに送られるのはかなり異例です)。彼の低調なパフォーマンスの原因として考えられたのがフットボールという競技への理解の低さでした。彼は
- 「相手オフェンスがどういうことを意図していているのか」
- 「その意図をスポイルするために自分はどう動かないといけないか」
の気づきが弱く、そのせいでプレイと関係ないところ、ボールの進む先と違う方向で空回りしている場面が目立っていました。ところが、このプレシーズンではこの「気づき」の部分が改善している様子がうかがえます。彼の身に何が起こったのか分かりませんが、これは彼にとってもチームにとっても間違いなく良いことです。
Linebacker
Strong side LB (SAM)
Nicholas Morrow (?)
Middle LB (MIKE)
Weak side LB (WILL)
2nd team
SAM にはN.Morrow かE.Lamur のどちらかが入るものと思われます。このポジションはディフェンスの新しいスキームでは
- ストロングサイドのエッジと協力してコンテインを担う
- プレイサイドのフックゾーン(特にTE)のカバー
を担います。N.Morrow はパスカバー、特にマンツーマンカバーに強みを持つ選手ですが、一方でランディフェンスやブリッツはあまり上手くありません。
Mikeのポジションでは2年目のM.Lee に注目です。元々タフな選手でボックスエリアでのランストッパーとしては高く評価していた選手でしたが今プレシーズンでのパフォーマンスもとても良かったです。新シーズンのかなり早い時期からD.Jhonson からポジションを奪ってくれれば、と思います。ただ、サイドライン~サイドラインまでを広くカバーできる機動力には欠けるところがあるのでその辺をチームが上手く使う必要があります。
今オフにLionsから移籍してきたT.Whitehead はプレシーズンでの少ないプレイ機会でも十分に目立っていました。彼からはとにかく頭のいい選手だな、という印象を受けます。
Cornerback
2017ドラフト1位指名のG.Conley にとって実質NFL デビューシーズンになります。彼は所作がとてもきれいな選手で「よく訓練された選手」という印象を強く受けます。彼のカバーを受けると相手レシーバーは「自分のリリースしたいようにリリースして、自分の走りたいようにルートを走って、自分が捕りたいようにボールを捕ること」がきっと困難になります。彼にとって一番の(そして唯一の)懸念材料は「ヘルシーな状態を保てるのか。1試合を通じて、1シーズンを通じてちゃんとプレイできるか」でしょう。
R.Melvin とD.Worley (4試合の出場停止処分)の2人は「シャットアウトコーナー」ではないかもしれませんがそれなりに「ソリッドな」活躍は見せてくれるのではないかと期待します。
L.Hall とD.Rodger-Cromatie の2人は今シーズンに限っての「繋ぎ」の補強だと思われます。ルーキーのN.Nelson も怪我上がりとはいえプレシーズンではアピールしきれませんでした。
このユニットはチーム全体のなかで最も選手層の薄いユニットと思われます。
Safety
FSのR.Nelson とM.Gilchrist はそれなりに機能するものと思います。
E.Harris (28歳、NFL3年目)は面白い経歴の持ち主です。ドラフトクラスとしては2012年組にあたりますが、NFLから声がかからずCFL で4年間プレイ。2016シーズンにSaintsに加入し2017シーズンからRaidersへ。Raiders では主にスペシャルチーマーとしての出番でしたがシーズンオフに新HCのGruden の目に留まり20161位指名のK.Joseph とスターターポジションを争うまでに。こういうシンデレラストーリーはわくわくさせられますね。
K.Joseph は相変わらずパスディフェンスに脆さを見せています。今季の彼は自分のポジションに競合相手を抱えた状態でプレイすることになります。彼はランディフェンスとパスラッシュに強みがありますが、このポジションにおける新政権のチームニーズは
- パスディフェンス(ディープゾーン1/2のカバーとTEのマンツーマンカバー)
- ボックスでの活躍
の順になると思われるので、1.の部分で競合相手に勝てないとなるといよいよ彼の首も危うくなると思います。
2. K.Mack のトレードとその影響(終わりに)
上述したデプスの俯瞰状況からチームの補強ポイント(ポジション)を整理してみます
切実に必要なポジション順
- スタートCB
- スタートCB(SLOT Corner)
- スタートT (D.Pennの後任)
- 1番手FS (R.Nelson の後任)
- スタートWR (A.Cooper とコンビを組める人材。J.Nelson の後任)
- スタートSAM (N.Morrow の上位互換)
- スタートRB (M.Lynch の後任)
- スロットWR (S.Roberts の上位互換)
K.Joseph が今季チームの要求を満たせなかった場合には上のリストにSSも追加されます。首脳陣には
「これだけのニーズを埋めるにはドラフト指名権もサラリーキャップの空きもいくらあっても足りない。ましてK.Mack に対して彼の要求額を支払ったとしたらチームのニーズを埋めきれない」
との判断があったのでしょう。
上の図は私が個人的に算出したRaiders ディフェンスのレーティングです。(Offense Rating については こちら をご覧ください。このレーティングは平均値が84で右列のDeviation Value (偏差値)は9シーズンにわたる延べ288チームの成績を元に算出したものです。K.Mack 自身のパフォーマンスは申し分ありませんが、一方ディフェンスチームとしての競争力はMack の加入前後を比較しても目に見える上昇(この場合低下ですが)効果はなかったことが分かります。首脳陣には
「Mack を放出したとしても、現有戦力と彼をリリースしたことで得られるドラフト指名権と生み出せるキャップスペースを使った補強とでより高い競争力を持つデプスを構築できる」
との読みがあるのだと思います。この読みが正しいか正しくないかの問いに対してなら、私も「それは正しい」としか答えられません。
というか、今季のレイダーズディフェンスは(スタートメンバーが然るべきスナップ数をプレイするという条件はつきますが)が上のレーティングの平均84を明確に下回る成績を挙げてくるだろうと確信します。
Mack のトレード条件は適切だったのか
Mack のトレード先としてBears を選んだことはチームとして大成功だったと思います。
- 同カンファレンス、同地区への流出を避けられた(こちらの損失がより近い競合相手の利益になることを避けられた)こと
- Bears ならK.Mack が加入したとしても近い将来、Raiders がスーパーボウルを制覇する目標の妨げになりにくいこと
が理由です。
指名権順位の高さや数についてのやり取りは専門的な知見がないのでコメントできません。
ですがまったく法外な取引を強要されたわけではないと思います。Raiders の側にMack を引き留めるオプションがないことは取引をまとめるうえで障害となったことが予想されますが、チームはそのダメージコントロールに成功した、というのが私の見立てです。
お前はMack を失って辛くないのか
辛いです。2014~2015シーズンにチームがMack,Carr,Cooper を引き当てて以来、この3人を軸にチームがリーグを制覇する場面をずっと妄想していました。でも16,17シーズン中にその目標へのトライに失敗した時点でこの妄想は現実的でなくなっていました。
Raiders とGruden の新政権にとってはこれからの3,4年が和了の絶好に機会になります。なんとしてもこの期間中に栄誉を勝ち取ってほしいですし、Mack も新天地で変わらぬ活躍を期待したいです。
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