2018 Season Week1 L.A.Rams vs Raiders Review
個人的に結果には満足しませんが、それでも面白い試合ではありました。
この記事を読み進めるうえで以下の参考記事があります。
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”ゲームの達人”
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勝ち組チームに学ぶパスオフェンスのトレンド
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Oakland Raiders vs Los Angeles Rams Preview (1.0)
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2018 Preseason week 2 Rams vs Raiders Preview
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2018 Season Week 1 L.A.Rams vs Raiders (Previw 3.0)
試合の概要
Oakland Raiders にとって、HCにJ.Gruden を迎え入れての新シーズンは黒星スタートとなった。
対戦相手のL.A.Ramsは攻撃ではRB Todd Gurley と新戦力WR Brandin Cooks の主軸2人が躍動。守ってはリーグのスターDT Aaron Donald がフロントラインを締め、CB Aqib Talib,Marcus Peters のコンビが両翼でRaiders の誇るワイドアウト Amari Cooper,Jordy Nelson に対する抑止力として有効に機能した。
RaidersディフェンスはRamsオフェンスのオープン~オフタックルを衝く速いランに対して適切に対処を行えず、そのことがランを餌にしたプレイアクションパスへの対応をより困難にする、という悪循環に陥った。オフェンスの出来はディフェンス以上に結果(敗北)に対する責任の割合が大きかった。オフェンスはRamsの重点マークにあった Amari CooperとJordy Nelson に早々に見切りをつけ(それはそれで合理的な判断だった)、TE Jared Cook をパスターゲットの主軸とした。一方で彼以外には主たるターゲットとしてRBJalen Richard しか持てず、3rd WR(Seth Roberts)をパスオフェンスのもう一つの軸とする選択をとれなかった。QB Derek Carr の投じた3本のINTのうち2本はJared Cook に投じられたパスによるのもで、つまりCooper/Nelson 以外のパスターゲットの選択肢の少なさがアクシデントの発生因子となり、このゲームの敗北の主たる要因になったと考えられた。
How to Ruin Raider “D”
1. Breaking their Contain
上の図で赤く記した領域は私が”Rushable Lane”と呼んでいる領域で、意味は「RBが走路として活用できるフィールド上の横幅」のことです。
ディフェンスは両サイドのエッジラッシャーが”Contain”、つまりラッシングオフェンスに対して自分の責任サイドのオフタックルをしっかり閉じることができれば(Rushabule Lane が上の図で黄色い線の内側に留まれば)、”Lane”上のディフェンダー密度も高くディフェンダーが動き回らないといけないフィールド上の横幅も狭くなるので断然RBを捕捉しやすくなります。
一方、エッジラッシャーがコンテインに失敗すると(上の図で示した黄色の線が消えると)、”Lane”はプレイサイドのサイドラインまで拡張されます。そうなると(”Lane”が横に長くなると)”Lane”上にディフェンダー密度の濃い部分と薄い分ができ、RBはその薄い部分を見つけて切れ上がることができるようになります。
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この試合におけるRamsオフェンス対Raidersディフェンスの第一ラウンドはこの”Contain”、オフタックルを閉じたいRaidersとそこを切り開きたいRamsの攻防戦だったわけですが、このラウンドはRamsの圧勝に終わりました。こうなった原因は「Rams側の”execution”のレベルの高さに対してRaidersのエッジラッシャーが対応しきれなかった」にあるといえます。
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2. Horizontal Stretch
“Lane”をサイドラインまで拡張することに成功すると次の目標は「フロント7を横方向に揺さぶること」です。
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3. Play Action
Ramsのプレイアクション。
R.Woods とR.Melvin の1対1にRaiders#31 M.Gilchrist が介入しないよう意図している。「2018 Season Week1 L.A.Rams vs Raiders Review」https://t.co/ieF5pZt06N pic.twitter.com/8Ukmo2SzJd
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Ramsオフェンス対Raidersディフェンス総論まとめ
以上で述べてきたように、Ramsのオフェンスは
- エンドアラウンド、TBへのピッチなどオープンを抜くことを意図したラン
- 相手に1. を意識させたうえでオフタックルより内側を衝く速いラン
- プレイアクション
の3本の柱から成り立っていますが、この3本の織り交ぜ方が抜群に上手くオフェンス選手11人のアサイメントの遂行も見事でした。
RaidersディフェンスはRamsの攻めに対し防戦一方にまわりましたが、それでもRamsオフェンスがRaiderオフェンスからボール2個(最後のピック6はカウントしていません)もらったことを考慮に入れると大健闘したと言えるんじゃないでしょうか。
Ramsオフェンス対Raidersディフェンス各論
1. Raider’s Defensive Interiors
チームとファンの熱い期待を背に受けてのデビュー戦でしたが、プロの洗礼を浴びる格好となりました。次戦以降のリベンジに期待です。
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2. Arden Key
同じくほろ苦いデビューとなりました。彼はバックフィールドに突っ込む意識の高さを逆手に取られる場面が目立ちました。ただ、ホイッスルが鳴るまでボールキャリアーを全力で追い掛け回す姿勢は十分好感が持てました。今後は相手オフェンスの意図への「気づき」の部分を改善していってもらいたいです。
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Raiders LBs
の4-2ニッケル構成でした。この日の試合の放映中もRaidersのロースターの平均年齢の高さが揶揄されていましたが、このユニットに関してはその年齢の高さ(D.Johnson,age:35,L.Hall,Age:33)による脆弱さを全く感じさせないパフォーマンスでした。この試合ではディフェンシブフロントが相手のラッシングに全く制限をかけられない状態に陥ったわけですが、にもかかわらずディフェンスの全面的な崩壊が食い止められ4Q 途中までどうにか試合になっていたのは、ディフェンスの崩壊をこの第2線が食い止められていたからです。
Gareon Conley
RamsエースのBrandin Cooks とのマッチアップが何回かありました。そのうち彼がアクロスのルートから反対側まで抜けるルートでロングゲインを許しましたが、、あれは彼以外のDBが助けてやるべき場面だったと思います。結果として彼のレシーブを阻止することにはほとんど(全く)成功しなかったわけですが、リーグ最高級クラスのWRに対するカバーとしてはよくやったんじゃないかと思います。事実、彼以外のカバーマンはCooks に対してボコられたわけですから。
Strong Safety (Left Side Safety)
Marcus Gilchrist がスターターを務めました。彼はこの試合の主戦場となった左サイド(Ramsからみて右)のランサポートと右フック~フラットゾーンのカバーで安定感を示しました。このことは昨季までこのポジションのスターターだったKarl Joseph の去就に影響を与えるでしょうか。 もしこの試合にスタート出場したのがJoseph だった場合、ランディフェンスやブリッツはGilchrist より上手くやったことだろうと思います(というかこの役割をJoseph 以上に上手くやれる選手はNFLにそうはいないと思います)。一方でJoseph がこのポジションにいたとしたらパスでもっと手酷くやられたであろうことも間違いありません。
Free Safty (Right Side Safty)
Reggie Nelson が務めました。彼はRaidersに移籍したときからそうなのですが、ディープボールが投げられたときにレシーバーを後ろから追いかける場面が目立ちます。FSはディフェンスにとって「最後の砦」なわけで、、私はずっとそのことに不満を感じていたんですが、改めてRaidersのロースターを確認したらGilchrist がSSにまわるとFSを務められるのがNelson しかいないことに今さら気がつきました。。
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Todd Gurley
なんともタフな選手ですね。オープンに抜けてから縦に切れ上がる速さといい、オフタックより内側の選手密度の高い地域に突っ込む姿勢といい、1Q初めから試合終了まで全く衰えない体力といい、文句のつけようがありません。彼のこの「ボールタッチ毎の生産性の高さ」は彼の才能を使いこなすチームの上手さと相まって相手チームにとって重大な脅威でありつづけるでしょう。
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Brandin Cooks
3シーズン連続でRaidersを痛めつけてくれました。本ブログではこの功績を称え彼に”Bounty hunter”の称号を授与します。これからも末永く「無法者狩り」をお続けてください。
Sean McVay
こいつ、、デキる!
再建途上のチームを任されるコーチの辿りがちなコースに「GMやオーナーが自分より裁量権を持っていてロースター編成も試合で誰を使うかも思うに任せない。で、自分がやりたいようにさせてもらえないのに結果を出せなかったことの責任を2,3シーズンで問われてクビになる」というのがあります。McVayもきっと、就任1年目の昨シーズンはチームの全権を預けられることはなかったんじゃないかと推測します。でも彼は自分に許された範囲の裁量権を適切に行使することで昨シーズン十分すぎるほどの結果を残しました。そして2年はこのスタート。彼はこうやってチームにおける自分の裁量権を増していき、「ぼくのかんがえるさいきょうのRams」を指揮していくんでしょう。いい人生ですね。羨ましい。
Raidersオフェンス対Ramsディフェンス総論
試合後のDerek Carr のインタビューによると、RamsディフェンスはAmari Cooper,Jordy Nelson の両名をAqib Talib, Marcus Peters がカバーするでけでなくこの両名にダブルチームをかけていたとのことです。Carr はだから、チームはJared Cook にボールを集めたのだ、と話を続けます。オーケー、一応筋は通ってる。しかしここには「語られていないこと」があります。
「第1,第2レシーバーはターゲットから外した。TEを主たるターゲットにした。で、第3レシーバーはどうしたんだ?」
この件についてはこの数年間ずっと腹に据えかねているので
「本当は怖いSeth Roberts のはなし」(仮タイトル)
と題して独立した記事を書くつもりでいます。この試合に負けた最大の要因、というか2015シーズン以来Raidersオフェンスの飛躍を阻んでる一番の要因は「ここ」です。
Raidersオフェンス対Ramsディフェンス各論
Jared Cook vs John Johnson III
この試合の主戦場となりました。J.Cook は9回のレシーブで180Ydsを稼ぎこのチームのパスオフェンスの「3本目の柱」としての存在感を示しました。一方Johnson はレシーブ回数/Ydsは稼がれたもののTDレシーブは許さずINTを一つ奪いました。RamsはCoop/Nelson に対し4人の人員を割いておりそれ故Cook に対して割ける人員はJohnson 1人という状況だったわけですが、Johnson はそのチーム事情のなかで求められるボトムラインは守ったと言えると思います。逆にいうと、Ramsは4人がかりでCoop/Nelson を完封したとしてもJohnson がCook を抑えられなかっとしたら、そのせいで負けかねない状況にあったわけです。
Derek Carr
29/40,303Yds,TD:0,INT:3
最初のINT(と最後のINT)についてはRamsの側も試合を観てる側も「RaidersはCook にしかパスを投げない」と分かり切った状況で起こったことで、いうなれば「こんなパスオフェンスをしてたらいつかは起こること」だったと思います。勿論Carr が避けられたのならそれに越したことはないんですけど。
むしろ2本目のINTや、そこまでには至らなかったものの軽微とは言えないインシデント(中途半端な投げ捨て)の方が彼にとっては重大だと思います。過去記事でもふれましたがQBの仕事は
- ダウンフィールドを観察し続けて、然るべきターゲットに、然るべきタイミングで、然るべきリードボールを投げ込むタスク
と
- 上のタスクを処理する間ポケット(またはLoSの自陣側)にとどまり続けるタスク
を並行して行わないといけないのですが、Carr の場合パスラッシャーの脅威を感じると上のタスク処理がなおざなりになる傾向があります。この欠点は例えば同地区ライバルのPhilip Rivers と比べても歴然としてて(Rivers は自分が倒されるその瞬間までパスラッシュを無視します)物足りなく思います。
Ramsディフェンシブフロント対Raidersオフェンシブライン
Aaron Donald はRaidersのオールプロG Kelechi Osemele からホールディング2回を奪いQBヒット1回(反則)と怪物ぶりを発揮しました。一方で対側DEのNdamukong Suh は抑え込みました。
Kolton Miller
QBハリー2回、ホールディングが1回。A.Donald の相手をOsemele が務めてくれたからこその結果でしょうが、NFLデビュー戦を無難に果たすことが出来ました。
K.Mack がいたら…(まとめ)
K.Mack はBears移籍後初のゲームで早々に存在感を示しました。Raidersはそのゲームがあった直後のゲームでディフェンシブフロントの実力不足を露呈してしまいました。J.Gruden 新政権にとっては就任早々の「失政」ととられかねない事態です。
「果たしてK.Mack をトレードに出したことは適切だったのか?」
これはこのシーズンを通じて、あるいはこのシーズンが終わったその後もずっと問われ続ける問いかけで、また問われ続けるに値する、問われ続けて然るべき問いかけだと思います。
論陣の一方には「K.Mack がいれば少なくとも一方のサイドのオフタックルは閉じることができてRamsオフェンスの展開を大きく制限することができた。またパスラッシュも効率的にかけることができた」という意見があります。
そしてJ.Gruden (と私)は「チームは右T、左CBをはじめ埋めるべきデプスの穴が複数ある。もしMack を彼の言い値を払うことでチームに残していたとしたら、これらの穴を強化するための経営上の体力を残せないじゃないか」と反論します。
論点を整理すると
- 右TにPenn 級の選手を欠いたオフェンスとDEにK.Mack がいて左CBにR.Melvin のいるディフェンス
のチームと
- 右TにPenn 級の選手のいるオフェンスとDEにK.Mack を欠いて左CBにR.Melvin の上位互換の選手がいるディフェンス
のチームのどっちが競争力を持つか?というはなしになると思います。コーチGruden も、私も
「このチームにはPenn の後継の右TとG.Conley の対側で彼相当の実力のあるCBが必要。Mack の抜けた穴は今季加入したディフェンシブフロントの新戦力によって埋めることが可能だ」
と考えているわけですが、今週の試合ではー残念ながらそのロジックを正当化できる結果は残せませんでした。
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