Just win, Baby 2.0
Just win, Baby 2.0 の行方
John Gruden 政権は悲願のスーパーボウル制覇を成し遂げられるのか?
可能性はあると思います。悲願の成就には「相手を選ばず毎試合30点近く取るオフェンス」と「オフェンスが30点取ることを前提にそれ以上に点を取られない、大量失点しにくいディフェンス」の構築が必要です。
「相手を選ばず毎試合30点近く取るオフェンス」
オフェンスのデプスはかなり充実しています。特にWR ユニットの厚みとスタートTE に人材を得ていることが大きいです。
Amari Cooper
2018シーズンはスロットレシーバーとして使われる機会が増えるのではないかと推測します。後述する”パスのスタイルの選択”次第で一気にリーグトップのWR に化ける可能性があると思います。彼に期待される役割は
- スロットからもワイドアウトからもパスを取りまくること
- ディフェンスの注意をディープゾーンに引き付けること。フィールドの手前のディフェンダー密度を薄くすること
- 自分がディフェンダーのマークを引き付けることでチームメイトの動き回れるスペースを稼ぐこと
です。
新戦力のJ.Nelson とM.Bryant については前職での活躍についてよく知らず新天地での活躍も推し量れないのでなんとも言えません。2人にはとりあえずCooper の動き回るスペースを広げることと、Cooper にマークが集中したときにボールの引受先になることを期待したいです。
Ryan Switzer
Cowboys からトレードで加入しました。彼のことは昨年のドラフトの時から注目していたのでRaiders への加入はうれしい驚きでした。彼にはまずCooper がワイドアウトにセットする場合のスロットレシーバーの役割が期待されます。このスロットのポジションはRaiders にとってここ数年間オフェンスのボトルネックになっていた個所です。ワイドアウトーTE にディフェンスのマークが集中しやすい条件下でディフェンス網の「隙間」に潜り込んでパスの受け皿になる役割が期待されます。Patriots のJ.Edelman のようになってくれたらなぁと思います。
Johnny Holton
昨シーズン印象的なロングパスキャッチを何度か披露しました。一方でドロップやつまらない反則をとられる場面があったりと評価が難しい選手です。とてもRaider らしい雰囲気をまとった選手で私は好きです。今シーズンは是非昨シーズンを上回る活躍を見せてほしいです。
ラッシングオフェンス
M.Lynch とD.Martin のローテーションによる、スラントオフタックル「遅い」ランが主体になりそうです。オフェンシブラインはこのスキームを昨シーズンより上手くこなさなくてはなりません。FB にランブロックを本職とする選手を加えました。昨シーズンまでRaiders 在籍していたJ.Olawale はデカくて器用な選手でしたが肝心のランブロックは上手くなく、そのことがショートヤードシチュエーションやゴールラインオフェンスの弱点になっていました。ランブロックの職人を加えることで3rd ダウンコンバージョンの成功率アップとゴールラインでのプレイ選択の幅が広がることが期待されます。
J.Richard とD.Washington
上記の補強方針を受けてチーム残留の可能性が微妙になってきました。PR/ KR にも専門職(?)が加入していることも立場を悪くしています。私はこの2人の2016シーズンの活躍を鮮明に記憶しているのでこの状況は私にとっても辛いです。なんとか2人を活かす道はないものでしょうか。
最重要ポイント「パスのスタイル」
”Fixed”なパスを選択した場合
プレイコーラーが「そのスナップにおいて、相手ディフェンスのコールに勝てるプレイを、コール」します。この場合QB D.Carr の果たす役割は
- 既定のターゲットに
- 既定のタイミングで
- 既定のリードボールを投げる
ことになります。Carr は速いタイミングでボールを手放すのでパスラッシャーからプレッシャーを受けることもありません。相手ディフェンスのカバーを読む必要もありません。このスタイルはCarr に苦手なことをさせずに得意なことに集中させる、Carr にとって最良の選択です。また左右のTackle が新戦力であることを考慮してもパスプロテクションにかかる時間は短いほうが好ましいです。
”Optional”なパスを選択した場合
Carr はおろおろしながらドロップバックし、ディフェンスがどんな意図でどんなカバーを敷いているのかよく分からないまま、自信無げに、適切かどうかわからないターゲットに、タイミングの悪いパスを投げ込みます。このスタイルはCarr に苦手なことを強要し強みを消してしまう、Carr にとって最悪な選択です。パスプロテクションに時間がかかるようになれば左右のTackle にかかる負担も大きくなりインシデント/アクシデントの発生リスクが跳ね上がります。
“2016シーズンのスタイルに戻せ”
2016シーズンのパスオフェンスの成功を支えたのはCooper /Crabtree への、”Fixed”なパスでした。今シーズンはWR のデプスが2年前より厚みを増しボトルネックとなっていたTE /Slot のポジションも埋まり、Cooper をワイドアウトから彼に強みがありそうなSlot に移す自由度も増します。つまり2016シーズンの成功を上回る大成功を収める素地ができています。しかしチームが”Optional”なパススタイルを選択したとすれば全てが台無しになります。どれだけ才能豊かなレシーバーを集めようとも、適切なターゲットに、適切なタイミングで、適切なリードボールが投げられない限りパスは通らないからです。
もしパスオフェンスが機能しなければ「毎試合にわたって30点近く取るオフェンス」は成立しないでしょう。その結果「オフェンスが上げた得点」より「相手チームの上げた得点」が上回るようになり負けが嵩みます。チームの悲願は夢で終わることになります。
「オフェンスが30点取ることを前提にそれ以上に点を取られない、大量失点しにくいディフェンス」
消極的な戦術ですが当面はこれで乗り越えざるをえないと思います。カギとなるのはディフェンシブフロントの4人によるオフェンスラインの「破壊」です。
ランディフェンス
相手オフェンシブラインに相対するディフェンシブライン要員は昨シーズンまでの5 (4DL + LB)から4 (4DL)に減ります。ランディフェンスの目標の第1は「コンテイン」です。相手のラッシングレーンを両DE間に封じ込めボックスエリアのどこかで止められたらとりあえず成功です。K.Mack はこの役割をリーグ最高レベルのクオリティで遂行するでしょう。注目点は彼の反対サイド、Irvin の働きです。ボックス内のどの深さでRB を捉えられるかはDTの2人がどれくらい相手オフェンスのブロックを潰せるかにかかってきます。今シーズンに限って言えば、私はラインバッカーには多くは期待していません。
パスディフェンス
ここもやはりDLの4人のパスラッシュにかかってきます。ラインバッカーによるカバーの出来はよく分かりませんが、CB とS のパスカバー能力は昨シーズンより向上するとみています。後ろの7人によるカバースキームが破たんするより先にパスプロテクションを破壊しQB にプレッシャーを与える必要があります。
ディフェンスには将来的には’90年代前半のCowboys 、2010年前後のGiants 、2012~2016のSeahawks のような「ドーミネート」な存在になってほしいと思います。
Mark Davis and me (終わりに)
Al Davis の跡を継いだ彼には、先代のような「ガツガツ」したキャラクターは感じられません。オーナーの職を継いで最初に意欲を見せたのがLas Vegas へのフランチャイズ移転だったように、彼の関心の先はチームを強くするといったことより「ビジネス」、チームの資産価値を高くすることにあるように思われます。これはチームにとって必ずしも悪いことではありません。
先代Al Davis は現場への介入を繰り返し、多くの間違った選択をすることで結果として自ら築き上げた栄光を大きく損なってしまいました。二代目のMark は、今までのところ先代と違い現場に口を挟んでいる様子はみられません。彼のオーナーシップのスタイルは「現場のことはプロに任せる。ダメだったらほかのプロを呼んできて任せる」というものようです。これはオーナーとして明らかに正しい、望ましい態度です。J.Gruden はかつてのRaiders での成功とBuccs でのスーパーボウル制覇でリーグの尊敬を集める人物ですが、コーチとしてはブランクもあり今回のRaiders での挑戦が実を結ぶのかどうかは見通せません。でも、Gruden が失敗したとしてもMark は次に有望と思える人材を登用し彼にチーム作りを任せるのではないでしょうか。このスタイルを維持している限りにおいてはそのうち「当たり」を引き当てる希望が持てると思います。
つまり、Just win, Baby 2.0 の成功のカギを握るのはMark Davis のオーナーとしての態度にあると思います。
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